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【追悼】かつて「アントニオ猪木」が大嫌いでした

2022年10月1日、元プロレスラーのアントニオ猪木が心不全のため死去した。79歳だった。近年は難病を患い「かなり体調が悪いらしい」とウワサされていた一方で「猪木なら大丈夫」と考えていたファンも少なくないハズだ。

かくいう私、P.K.サンジュンもその1人で「まさか猪木が」とそれなりにショックを受けている。燃える闘魂、アントニオ猪木──。プロレスファンになったおよそ30年前、私はあなたのことが大嫌いでした──。

・猪木との出会い

中学1年生だった私がプロレスにハマったのは、ちょうど第1回のG1クライマックスが開催された頃。すでに猪木は政界に進出しており、私にとってアントニオ猪木は「新日本プロレスの創始者だけど、たまにしか試合をしない昔の人」といった印象であった。

当時の新日本プロレスは藤波辰爾と長州力の2大エースに加え、武藤敬司・橋本真也・蝶野正洋の “闘魂三銃士” の時代。その他にも馳浩、佐々木健介、獣神サンダーライガー、ビッグバン・ベイダーらがおり、特に “猪木不足” を感じたこともなかった。

そんな私が初めて見た猪木の試合は、1992年に開催された1.4(イッテンヨン)「超戦士 IN 闘強導夢」の「アントニオ猪木 vs 馳浩」の戦い。この試合をきっかけに私はアントニオ猪木のことが大嫌いになったのである。

・卑怯な猪木

当時の馳はメチャメチャ勢いがあり、私自身も馳はお気に入りのレスラーであった。片や猪木は**1年3カ月ぶりのリング。**まだプロレスを見始めて数カ月しか経っていないピュアBOYだった私は、馳の勝利を信じて疑わずにいた。

……が、試合はまさかの猪木の完勝。私は茫然とした。そして納得がいかなかった。特に試合中盤に猪木が繰り出した “チョークスリーパー” を「猪木ズルい!」と心の底から憎んだ。

「このアントニオ猪木というヤツは、普通に戦ったら勝てないと思って反則を使ったんだな?」「創始者だか何だか知らないが、なんと卑劣な男なんだ」かくしてサンジュン少年の心には「アントニオ猪木 = ズルいヤツ」「勝つためならなんでもする卑劣な男」と刻まれたのであった。

・プロレスを知る = 猪木を知る

だがしかし、その後プロレスを深く知るにつれ、アントニオ猪木の偉大さも理解できるようになってきた。そもそも試合だけでは計り知れないアントニオ猪木の圧倒的スケールに魅了されないプロレスファンなど存在しないのだろう。

当時、プロレスファンを名乗るということは、周囲からの「八百長なんだろ?」という声と戦うことでもあった。私はプロレスラー最強説を純粋に信じていたので、1997年に高田延彦がヒクソン・グレイシーに敗れたときも大きなショックを受けたものだ。

その時も私を救ってくれたのは猪木だった。高田の敗戦を受けた猪木が出した「まあ、よりによって1番弱いヤツが出て行きましたからね」というコメントに救われたプロレスファンがどれほどいただろうか?

・猪木信者ではなかったけれど

とはいえ、格闘路線にこだわった挙句、当時の新日本プロレスをメチャメチャにした猪木には怒りを覚えたし、決して私自身は “猪木信者” では無かったと思う。それでも「モハメド・アリ戦」などを通じ「プロレスラーは本当に強いんだ」と思わせてくれたのは、紛れもなくアントニオ猪木であった。

猪木にイラついたことも、猪木に狂喜したことも、猪木を鬱陶しく思ったことも、いま思えば全て猪木の手の上で転がされていたのだろう。あの馳浩との一戦を見たときから、私は猪木にコントロールされていたのだ。

熟年のプロレスファンを唸らせることも難しいが、テレビの向こう側にいる “プロレスを見始めたばかりの少年” までを夢中にさせてしまうアントニオ猪木はやはりとんでもない。その全てにおいて、今後アントニオ猪木を超えるプロレスラーは出てこないだろう。

猪木のことを快く思っていなかった時期でさえ、会場で「炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~」がかかると、私は**全力で猪木コールをしていた。**好き嫌いなどを超越した稀代のカリスマ、それがアントニオ猪木なのである。

思春期にプロレスに熱中し、プロレス話が盛り上がってロケットニュース24のライターになった、かつてのサンジュン少年。全てはあなたが命がけで築いてきたプロレスがあったからです。ありがとう、アントニオ猪木。さらば、アントニオ猪木。燃える闘魂に合掌。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

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